なるほど熱力学

村上雅人著/A5判288頁、 本体2800円/ISBN4-87525-222-6
●本書は自由エネルギーを中心として熱力学を解説している。そのため、従来の教科書とはかなり趣を異にしている。従来の熱力学では、熱機関を中心とした導入部分があるが、熱機関では、本来の物理と異なる複数のプロセスからなるサイクルからできているうえ、サイクルで議論をしてしまうため、私から見てもわかりづらい。本来は、サイクルではなく、サイクルを構成している素過程で論ずるべきである。さらに、状態関数であるエントロピーの導入の説明には首を傾げたくなる部分も多い。そこで、本書では、ある程度熱力学の有用性を理解した後で、熱機関について考察をしている。 ■弁解ではないが、本書の内容もすべて完結しているわけではない。特に、熱機関の効率に関しては多くの反論が出るのを覚悟で、あえて挑戦的な内容を展開している。(「はじめに」より) ■これまでの熱力学の解説書は、現象論的で難解なものであった。本書では数学的考察を中心に展開した今までにないユニークな内容となっている。そのため、この分野の基本的・標準的な書籍として評価されよう。